無肥料栽培では
直播を基本とします
石井吉彦|種と土と野菜の学校「石井ピュアファーム」代表さんから
無肥料栽培の基本 6.直播を基本とする
— 無肥料の苗作りと直播の違い—
直播を基本とする — 無肥料の苗作りと直播の違い
無肥料栽培では、直播を基本とします。
一般の苗作りは、肥料を入れた床で育てることが多く、無肥料の畑とは相性がよくありません。
では、肥料を使わずに苗を作った場合と、無肥料で直播した場合とでは、何が違うのでしょうか。
結論から言うと、無肥料で苗を作っても、直播の代わりにはなりにくいというのが実感です。
理由は、肥料の有無だけではありません。
■ 根の伸び方が違う
直播では、発芽した根が最初から畑の土へ入り、真下へ深く伸びやすくなります。
深く入った根は水を求めやすく、倒れにくく、環境の変化にも強い株に育ちやすい。
一方、ポットや苗床で育てると、根は容器の中で巻いたり、横へ回ったりしやすくなります。
肥料を入れなくても、「容器の中で育つ」こと自体が、根の形を変えてしまうのです。
■ 育つ場所が最初から同じかどうか
直播は、最初から実際の畑で育ちます。
苗作りは、無肥料の床であっても、最初の大事な時期を別の環境で過ごし、あとから植え替えることになります。
このズレは、決して小さくありません。無肥料栽培では、種と土の最初の接点を大切にしています。
途中で合わせるより、最初からその畑で合わせるほうが自然だからです。
■ 植え替えの切れ目がない
苗を植えると、根が傷ついたり、水の吸い方が一時的に乱れたり、生育が止まったりすることがあります。
直播には、この切れ目がありません。
無肥料栽培は、外から肥料で立て直すということをしません。だからこそ、途中で株を弱らせないことが、より重要になってきます。
■ 畑の環境に最初から慣れる
直播の株は、最初からその畑の温度差、風、乾燥、日照を受けながら育ちます。
苗床や育苗場所は、どうしても実際の畑より守られた環境になりやすいものです。
実際の畑へ出したあとに、その環境差を受けやすいのが苗。
最初からその差の中で育つのが直播、ということになります。
■ 生育の順番が違う
直播は、初期の生育がゆっくりに見えやすい傾向があります。
先に根を張り、そのあとで茎葉が伸びるという順番になりやすいからです。
苗は、ある程度育った状態で植えるため、最初は進んでいるように見えます。
しかし無肥料栽培では、見た目の早さより、根が確かに土へ入っていることを優先します。
早いことが、そのまま強いこととは限りません。
■ 芽が出ないところも観察の材料になる
直播では、発芽が揃わなかったり、芽が出ないところができたりすることがあります。
不便ではありますが、どこが発芽してどこがしないかは、土のムラや条件の差を教えてくれる貴重な情報です。
苗を均一に植えてしまうと、この情報は見えにくくなってしまいます。
■ 管理が増えにくい
苗作りは、床土の準備、温度や水の管理、植え付け適期の判断、植え傷みへの対応など、どうしても工程が増えやすくなります。
直播は、種を蒔き、あとは畑を観察するのが中心です。
資材も工程も増やさない無肥料栽培の考え方と、直播はよく合います。
■ 自家採種では、違いがさらに大きくなる
自家採種の種は、その畑で残り、種まで行きついた株の子です。
直播であれば、覚えた場所にそのまま戻り、発芽からその畑の条件で育っていきます。
根の入り方や、その後の生育の安定にもつながりやすい。
苗作りの場合、種そのものは良くても、最初の環境が実際の畑とずれてしまいます。
「その畑の種」という力が、そこで弱まりやすいのです。
自家採種を続けるほど、その畑へ直播されること自体がひとつの選抜にもなっていきます。
だから、自家採種した種は、できるだけ直播するのが基本です。
■ まとめ
無肥料の苗作りと直播の違いは、肥料を入れないかどうかだけにとどまりません。
・根が深く入るかどうか
・最初から実際の畑で育つかどうか
・植え替えの切れ目があるかどうか
・その畑の環境に最初から慣れるかどうか
・根から育つ順番を守れるかどうか
・自家採種の力がそのまま生きるかどうか
これらすべてが、違いとして表れてきます。
苗は、寒地や発芽の難しいものなど、どうしても必要なときの補助にすぎません。
無肥料栽培の基本は、あくまで畑に直接蒔くことです。


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