日本のコメ流通の混乱を多層的に見る
米は単なる食品ではなく「インフラ」でもある
ウォッチアナライザーの笹山登生さんから
メモ
今回の備蓄米放出に端を発した日本のコメ流通の混乱を多層的に見るために、上下水道モデルにたとえてみると?
通常の「都市型上下水道」=平時の米流通構造
上水(上流)=農家の収穫・出荷
中流(精米業・卸業)=精米・袋詰め・物流
下流(小売店・米穀商)=地域の米屋・スーパー等
とみてみると?
これまでは全体が
「需要と供給」+「価格メカニズム」+「市場仲介」で、ゆるやかな調和を保っていた。
今回の備蓄米放出=「中水(処理再生水)」の強制逆流
とみれば
通常時は備蓄米(中水)は非常時用として「タンクに静置」されているだけなのが
今回、市中在庫に対する需給の読み違い(例:都市部の水圧不足錯覚)により、政府が行政主導で備蓄米(中水)を放水した。
その結果
下流(米屋)が飽和 → 売れない
中流(精米業)が余剰在庫を抱え → 仕事激減
上流(農家)は新米価格下落・買取停止の不安に直面
させてしまった
その結果、「逆流」=ロジスティクスの機能逆転現象が生じてしまった。
つまり、流れを無理にいじることで、自然な需給調整機能が失われてしまった。
流通業者が本来「水圧(需要)」に応じて動いていたのに、人工的な水流(備蓄放出)に巻き込まれ、動線が壊れたということ。
本来の構造では、市場の中で、需要の増減に応じて柔軟に対応するのが精米業・袋メーカー・米屋の強み。
→ それが「災害対応のような一方通行指令」によって機能停止してしまった。
たとえば。「政府が銀行に米穀業の資金繰りを頼む」というような珍現象は、制度設計の主客転倒ともいえる。
通常、末端小売業者は、これまで自律的な経営判断(地域ニーズや現金フロー)で動いていたのである。
ところが、備蓄米の放出により、売上や在庫の回転率が壊れ、資金繰り悪化 → 金融支援要請という最悪事態にまで立ち至りつつある。
→この結果、米国業界全体が「補助で生きる零細措置民」構造に戻ってしまいかねない。
問題の本質:
「一部最適が全体最適を壊す」という典型例となってしまいつつある。
つまり、意図した調整(局部介入)が、実は他の部分を傷つけ、トータルでは調和を崩壊させる。
これこそが「片眼的な思考」の危険性である。
市場は多段階でバランスをとる構造なので、一点介入ではなく、動的調整と透明性が不可欠。
結論:
コメ流通の「社会インフラ」としての再認識が必要
米は単なる食品ではなく、「インフラ」でもある。
インフラはバランスで成り立つものであり、強制的なバルブ操作(備蓄放出)は、流域全体に及ぶ。
よって、今求められるのは:
流通全体の「連結機能の再設計」
単発対策でなく、地域ごとの需要・流通動線のデータに基づく動的制御
「コメ屋を救う」のではなく、「市場のバランスを守る」視点が農水省に必要 ということ。
アキダイの社長も、この前、同じような懸念を示していたな。
0 件のコメント:
コメントを投稿