「農薬問題」に関して、石垣稔さんの秀逸な原稿を入手しました。ご本人の承諾をいただきましたのでここに使用させていただきます。
「ミツバチが世界から姿を消している」との報道がなされてから久しいですが、その原因や影響について、背景情報も含めて正しく論究されている情報は少ないのが現状です。何が事実の情報から遠のかせているのでしょうか。明快な答えがあっても、事実は隠蔽されていることが多いのです。基本前提として、一般的に、ミツバチが急激に減少(2007年春までに北半球から4分の1は消失)した原因は、複合的であるとされています。すべての真実もそうですが、真実を形成する事実はひとつであるとは限りません。複数の事実があって、現象が形作られます。そして、ひとつの事実が、重大な意味を持つこともあります。▼ミツバチがいなくなるという意味生態系において、生物量は少なくとも、生態系へ大きな影響を与える生物種のことを「キーストーン種」といいます。その生物種が欠けると生物群集全体や生態系に大きな影響が生じる種であるということです。▼ミツバチを殺戮する「農薬」さて、免れない事実があります。ネオニコチノイド系(ネオニコ系)農薬(殺虫剤)が原因物質として、ミツバチを大量死に追いやっているという事実です。ネオニコチノイド系農薬はアメリカ、ヨーロッパ、韓国などで大量に使用され、ミツバチ絶滅は、もはや地球規模で進行しています。また、この薬物は、人や動物には比較的毒性が低いとされつつも、脳を中心とした中枢神経、自律神経への作業を懸念するレポートも提出されています。このような事実に基づき、海外では、関係する農薬の認可取り消しや、使用禁止措置を取る国もあります。この国の具体的な事例では、2005年、岩手県でイネのカメムシ防除のためにネオニコチノイド系農薬が広域に散布された時期と重なり、ミツバチが大量死し、養蜂組合が損害賠償を求める動きを起こしました。その際は、全農県本部と県農薬卸商業協同組合が養蜂組合に計500万円の見舞金を支払うことなどで和解しています。しかし、翌年も同様の農薬散布後に被害が発生し、養蜂組合は全農県本部と県農薬卸商業協同組合を相手取り「農薬の販売差し止め」や「被害の損害賠償」を求めて盛岡簡裁に調停を申し立て、受理され、和解が成立しています。▼国の調査の不可解な結論付け前項のような客観的事実を踏まえながら実施したはずのこの国の調査では、以下のような結論付けがなされています。農水省では、2009年、農業・食品産業技術総合研究機構・畜産草地研究所と名古屋大学大学院生命農学研究科によって構成される「緊急調査研究チーム」を組み、2010年3月に報告書が公表されています。この報告書の中に、以下の重大な事実が含まれています。1)農薬で大量死したとして養蜂家から送られてきた26検体中、24検体(92.3%)からネオニコ系農薬(クロチアニジンとジノテフラン)が検出。2)農薬散布によって群が弱体化した16検体では11検体(68.8%)からネオニコ系農薬が検出。こうした客観的事実を把握しているに拘わらず、研究チームは、交配用ミツバチのストレスや伝染病などに関する実験・調査を併せて実施し、最終的に「ミツバチ不足の原因としては伝染病、多種類のウイルス、寄生ダニなどの要因も考えられる。最大の要因が何であるか特定できなかった」と結論づけています。さらには、研究員が「農薬と大量死の間に明確な因果関係は認められない。農薬がミツバチを殺す作用の仕組みも明らかでない」と説明しています。▼なぜ農薬が規制されないのかここで不思議なのは、この国では、なぜ「農薬」が規制されないのか、という事実です。ひとつの考え方は、この国の「農薬使用量」です。驚くかも知れませんが、この国の耕地面積あたりの農薬使用量は、世界トップなのです。(2位は韓国:OECDデータより)もちろん、第1位だからといって最悪であると考えるのも早計で、遺伝子組み換え食品などは、そもそも、農薬に匹敵(害悪はそれ以上?)する強力な耐性が、遺伝子レベルで組み込まれているのです。それでも、「直ちに健康被害はない」農薬リスクに侵され続けているのも疑いようのない事実です。利益至上主義に傾向してしまったこの国では、産業界・特定企業からの圧力は研究者、国にまで及ぶことは、他の事例からも明らかです。農薬の世界(ケミカル産業)も同様で、巨大な利権システムが潜んでいます。産業界・特定企業の利権が強い状態では、事実の訴求は難しいことは言うまでもありません。▼自然生態系をいかに守るかミツバチは氷山の一角にすぎません。同様の話は、現在では多くの場面で見られます。そして、自然生態系が失われ、私たちの健康も脅かされる将来を想像してみてください。とても恐ろしい世界です。このような世界にしないために、今からでもできること、それは「無農薬の食品の購入」を心がけることからでも始められると思います。可能な限り「無農薬の作物」を摂取することで、多くのリスクを回避することにもつながります。怖いのは「放射性物質」だけではないのです。市場が「無農薬の作物」を求めるようになれば、必然的に農薬使用量が減り、国土も浄化されていきます。生態系も少しづつ復活していきます。個人的には、「無農薬」「無肥料」の作物をオススメします。これを「自然栽培(自然農法)作物」と言います。本当の「無農薬」「無肥料」の作物を食べると、今までの「一般栽培」「有機栽培(肥料は使用)」が何だったのかと思えるほど、味も良く、日持ちがし(自然栽培作物は腐りません、枯れていきます)、身体に良いことが実感できます。調理する際に捨てるところが無いことも素晴らしいです。確かに価格は高いものが多いですが、週に幾度かの「化学物質抜き」をすることも大切だと思います。ミツバチは、正にこの「キーストーン種」なのです。人間がミツバチから受ける恩恵は、蜂蜜やローヤルゼリー、プロポリスのような自然栄養食品だけでなく、農業の分野では、農作物の花粉交配(受粉)に欠かせない存在です。ミツバチがいなくなると成立しない作物もあるほどです。しかも、人間が手助けする人工受粉に比べ、ミツバチが受粉する事で、奇形果の減少、着花率向上、果実の大型化、糖度増加等の違いがあるそうです。勿論、人が食べる作物以外でも、植物の生態系における役割は重要であると言えます。特筆すべきは、不思議なことに、一匹のミツバチが訪れる花は同一種だけで、他種の花には行かない性質があることです。それため、同一種の花の花粉交配には大変効率が良く、また別の株の受粉を行うことで、丈夫で良質な種が保たれます。他の種類の花については、別のミツバチがその役割を担うこととなります。このように、ミツバチは生態系における花粉交配上、他者に代わりが出来ない大きな役割を果たしています。地球上からミツバチがいなくなったら、人間は数年も生きていけないと警鐘する学者もいます。ぜひ、ご自分の手でも調べて見てください。
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