富良野で日本一のメロン農家をめざしているのが、感動野菜産直農家・寺坂農園=寺坂佑一さんです。
その寺坂さんは13年前まではお米と豆づくりで農協出荷をしていました。
しかし長引く市場価格の低迷で赤字の連続。増え続ける借金でため息ばかりでした。 (写真:寺坂佑一さん)
このままではいけない!なんとかしなければ・・・・。
そこで、勇気を出し思い切って米と豆栽培を止めメロン栽培に集中することにしました。自分で販売を考え直売所もオープンさせました。また全国向けの通信販売も開始しました。
何よりの喜びは販売価格を自分で決められることでした。さらにお客さんの声が直接「あのメロンとても美味しかったよ!」と届くことでした。
こうして地道な努力を続け、お客さんの支持を集め一歩一歩売上を増やして自立経営農家をめざしました。
しかし、自然条件は厳しいものです。とくに一次産業は、季節変動が激しく生産がとても不安定です。
メロン全滅状態の時がきました。
お客さんから届いた声は「まるでダイコンみたいな味だ!」「騙されたようだ・・・」と散々。
しかも、こうした時に限り発送ミスも重なり一挙に信用を失いました。
ただひたすら謝り続けるしかなったのです。
しかもメロン栽培に切り替えたことで、仲間とも交流が少なくなりました。お米を中心とする農業は地域の協同作業、集団営農が基本です。
直販を開始するということは、そうしたシステムから抜け出すことでもありました。仲間たちからは「あんなやつは地域に必要ではない!」とも批判されました。
来る日も来る日も「自分だけがなぜだ!」と不安と孤独感に苛まれました。
しかし、こうした絶望のなかでも直販作業は続けました。栽培技術の改善も試行錯誤のなかで諦めずに続けたのです。
自分で決めた道であるから弱音は吐けませんでした。
ところが、また「美味しかった」と子どもたちからの手紙が届くようになりました。そして注文が増えてきました。
一方で地域の運動会やお祭には積極的に参加して、近所の幼稚園児のためにトウモロコシ畑を開放したりして、次第に地域から受け入れられるようになりました。
むかしの仲間たちから「いい野菜をつくるから、販売はたのむよ!」「これは一つの理想の形だな!」と言われるまでになりました。
いまでは栽培面積も拡大し、働いてくれる人たちも増えています。栽培品目はとうもろこし、じゃがいも、人参、カボチャなどです。
寺坂佑一さんがいま取り組んでいるのは栽培技術の改善はもちろんのこと、食の安全性を求めるなかでの営農です。こうした悩みをかかえている生産者は多いのです。今後は寺坂農園が自立経営農家のモデルとなってほしいものです。
この記事は寺坂農園で制作された動画をもとに書かせてもらいました。
http://www.youtube.com/watch?v=qe9eXxrPyYA
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私はこの動画を拝見したときに、すぐに記事を書かせて貰いたいと寺坂さんに取材をお願いしました。聞きたかったのは下記の3点です。
①栽培品目の転換をはかった経緯(米、豆→メロン)
②なぜ産直を始めたのか
③どうして幸運を引き寄せられたのか
①については米の消費減が激しいので当然のことです。
②については寺坂さんも力説されてましたが、消費者の声が直接聞けることの意味は大きい。相場で出荷する品目ではいくらで販売できるか分からない。ここに生産者にとっていまいちばん大きな不満があります。したがって自分で売価を決められるところが大きな魅力であることに変わりはない。
③については、諦めない努力は多くの生産者が体験しています。むろんそうした粘りが幸運を呼ぶきっかけになった思いますが、タ-ニングポイントになったのは、地域社会への溶け込みの努力が大きいと思い寺坂さんにもお聞きしました。むかしの仲間たちに「これは一つの理想のかたちだ!」といわれるようになったのは、とても有難いことだし、同調者が増えていくことでしょう。
寺坂農園の今後の課題としては、「食の安全と栽培法の改善」が残るでしょう。いま消費者の関心は食の安全性の問題です。寺坂農園がこうした問題を克服したときにさらに大きな飛躍ができるでしょう。
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