2011年11月13日日曜日

青果物の流通はこれでいいのか?




 日本農業再生










【特別寄稿】
峰松三四男さんのプロフィール
1940年、佐賀県鹿島市生まれ
1971年、佐賀みかん販売をめざして金港青果株式会社に入社
1977年、佐賀県園芸農業協同組合連合会に転職
       東京事務所(神田市場)に配属。
果汁飲料の営業部門に従事。 大手飲料メーカーソフトドリンク果汁製品の先駆けから拘る。
1988年、(平成元年)大田市場開場とともに青果担当所長。市場流通に拘る。
2000年、退職(佐賀県経済連)
        引き続きJA佐賀みどり青果アドバイザーとして、市場や店舗を巡    回  し、青果物販売促進に携わる。
2005年、 金港青果株式会社のアドバイザー
2011年、 フリーとなる
1、市場流通の変遷
 一元集荷の一元販売時代

(1)青果物の流通は小売店主体の取引から量販店への依存度が高まった。いまや量販店が価格形成の主導権を握っていることから、それにともなって市場では競売から相対取引に移行してきた。したがって従来の小売業者の立場が薄れ、仕入れ内容も大きく変わり販売力の低下が加速され廃業店舗が増え10年前と比較して、小売買参業者は各市場ともに30%から50%くらいは減っているのが現状である。
p1010766.JPG競売の形骸化が進んだため市場では早朝の賑わいがなくなり、販売不振の会話が囁かれることが日常茶飯事となった。したがって、本来の評価機能や価格形成機能が低下した。

価格は本来競売で決定されることが理想である。最近の産地事情が反映されて希望価格を重視した相対取引が主流で、市場サイドの提示価格は個々の取引を有利に展開するために、買参者の意向に沿って低価格志向に陥っている。

さらに受注販売システムは受身の取引で流通在庫が軽減化されるが、余分な在庫を持たない仕入体制で、需要量の少量化につながって生産量の減少が予想される。
(2)量販店は市場の垣根を越えた仕入れを展開していることから市場間競争も激化し、価格の引き合いも売価からの逆算で提示され激しい価格形成に引きずられて、「品質評価」より「販売優先」の取引は経験豊富な市場担当者の位置づけが薄れている。需給バランスから多い少ないが価格の決め手になっていることから産地サイドでは安値基調に対する不満が醸成されている。

市場は産地事情を把握して速やかな情報を販売に生かすことで、有利販売が見込まれ信頼関係が確立され産地拡大につながった経緯を思い起こすと、人間関係が疎かになって特徴のあった有数の産地が消えていく過程が想定される。安定数量で出荷可能な産地が、市場サイドでは有利な取引を形成しているといわれている。
(3)わが国の青果市場は、これまで生産者と消費者をつなぐ流通は他にない合理的なものであった。多元集荷、一元販売のレールが敷かれ卸売市場中心にその機能が生かされていた。
しかし、最近ではそうした機能が生かされない環境になっている。競売が盛んなころは営業担当者は集荷に専念し、産地開拓に奔走し終始全国の産地に出向いて生産者との交流が産地育成につながり、青果物の品目が新たに誕生し産地構成が幅広く開け露地栽培から施設栽培と目まぐるしく変化し園芸作物の進捗に大いに貢献し品質の向上に貢献できた。

とくに果実においては生産者が京浜市場を視察すると、必ず果実専門店を訪問し、他産地の品質を見比べながら品質向上に向けて取り組んだものだ。こうして国内の青果物は世界に類を見ない品質と評価された。
■ 全農センターが市場流通に参入
しかし、30年ほど前から急速に量販店対策として外国市場を見習って、全農直販センターが市場流通に参入し、市場機能を根本的に覆し品質評価から物流対応に切り替えて価格優先の青果市場に矛先を向けたことが、今日の市場機能の変化に起因し直販流通のウエートが高まり、卸売市場の情報発信機能が軽視され、担当者は延々と注文を受けることに専念し販売を疎かにしていることに気づかず最終的には価格安の要因になっている。
(4)市場外流通の拡大が価格形成機能に与える影響は図り知れない。産地直販システムは市場流通の安定販売を損ないかねない。旬の商材品目が話題を提供して業者の関心が高まり市場流通が価格形成を発揮することになるのだが、いまはこうした有利販売が薄れている。とくに果実の市場外流通は50%を超えているから、欲しいときに数量が見込まれず販路開拓ができない。逆に数量が増えたときには安値の要因につながっている。

野菜も外食、中食などの業務用需要が輸入野菜にシフトして、さらに産直が拍車をかけて市場流通に支障をきたしている。市場流通が少なくなると生産数量が減少するきっかけとなって需給安定が懸念される。
産直は産地の活性化が消費者と密着した意味合いで強調されて歓迎されているが、JA直販センターが市場流通を形骸化させ、産地直売所が商店街の利権を奪いその結果、卸売会社の経営状態は弱体化し、将来的には多元集荷の一元販売が消えた場合を想像すると、生産から販売への対応ができる産地は限定されて生産基盤の崩壊も予想される。
さらに宅配の急速な発展で産直から無店舗販売へと市場機能を無視し、町起こしから「道の駅」等の直販店舗が全国各地にオープンし、消費者の関心が注がれ商店街は冷え込みさらに量販店、業務用需要は産地業者や出荷組合による産直が市場外取引に拍車をかけて市場流通に大きな影響を与えた。いま市場には再編成の波が押し寄せている。
(5)輸入青果物の動向も市場流通に影響をもたらす。平成元年は野菜が206千トン平成17年には1071千トンを超えている。果実も同様で、1531千トンから1806千トンに増えている。単価は野菜が199円から95円、果実は116円から96円と下がっている。国内青果物の生産、消費が伸び悩んでいるなか外食、中食の加工、業務用需要が安定し市場取扱数量も野菜は増加傾向で、果実は横ばいと言われているが、国産青果物の価格形成におけるその影響は大きい。
輸入野菜の品目はたまねぎ、かぼちゃ、人参が10万トンを超えてねぎ、キャベツの順で、果実はバナナが100万トンを超え、グレープフルーツ、パイナップル、オレンジの順で、国別では一位が中国、アメリカ、ニュージーランドの順で、とくに生鮮野菜は年々中国産の輸入が増え、業務用関連の需要に国産品が苦戦を強いられている傾向である。
青果物の安心、安全が生産段階で重視されてポジティブリスト制度が施行され、JA関係者は栽培履歴を記帳する指導を生産者に行い、全ての農薬に設定された残留農薬基準を遵守させている。
■ 受注時間帯締め切りの導入を
一方、輸入野菜で品質保持剤が移用されていると思われる品目がたくさん市場でも出回っていることは留意すべきである。たとえば中国産皮むきたまねぎの品質が良好で日持ちがする。一般消費者は中国産には抵抗感を示し買い控えの傾向であるが、業務用に納める業者は皮むき作業の軽減化から、商材として飲食店、病院給食等にも価格が安いからといって使われているようだ。
(6)本来、青果物の取引では情報提供で品質を見極めて、経験者の評価によって市場販売が行われる。しかし最近は買い手の意向に沿って売価からの逆算で価格が設定され需給バランスが崩れて、入荷量が多いと価格は暴落するがそれでも小売価格は高いと流通関係者に不満が高まっている。
以前はゴミも消費のうちと言い尽くされていたが、もうゴミは有料化時代である。取引形態が競売であれば販売量も膨らむが、予約相対取引では必要量のみ発注することで流通量は少なくなる。最近は業者からの注文取引で消極的取引傾向になっている。
そのことを少しでも改善するには、受注締め切り時間帯の採用である。例えば締め切りを午後3時とすれば、予想数量から発注すると上積みが期待できる。近在産地も出荷予想数量を早めに報告すると販売に支障はないし、有利販売が見込まれる。
一方、市場関係者は終日対応の取引環境で労働条件は、他産業からすると最悪で労働コストが高く経営面でも厳しい環境になっている。販売環境の改善で販売担当者も時間帯に余裕が出来て職場の労働時間の改善につながる。市場本来の機能が回復されないと、閉塞感は免れないと危惧する。
■ 仮想価格形成をどう打ち破るか
(7)果実部門では、従来は果実は青果市場の花形主人公として君臨していたが、いまや「野菜部果実課」と揶揄されるまでになっている。
主力品目のみかんの消費低迷は果実全般に影響を与えている。最盛期の350万トンを超える数量から100万トンに減っているにも拘らず、ただ量が多い少ないのと位置づけでなんとも寂しい感じがする。4月からハウスみかんの販売が始まり、9月から極早生みかん、また貯蔵みかんと周年出回っているが、品質や数量の問題が提起されても販売面では評価されない。
柑橘類の販売は市場関係者のみならず、生産者を交えて問題を解決していく時がきている。みかんの販売環境を変えるためには、みかん産地が連帯感をもってみかん売り場を確保する意気込みで消費拡大と市場優先販売をめざして生産面に反映することで、卸売会社と統一行動を起こし売り手市場としてリーダーシップが発揮されれば、安定数量が確保され輸入果実に対抗する国産果実の安定販売が可能であろう。
生産者論理から消費者論理に向かって、生産コストの削減に市場関係者も理解を示し国産果実復活へ責任を感じて欲しい。国内産地が崩壊しては市場は成立できないからである。
(8)市場価格が統一されていることへの懸念もある。野菜、果実の単価が関東、関西の違いはあっても、京浜市場間でほとんど同一単価で市場の特性がない。各市場では予約相対販売は仮想価格で、東京青果の価格を見習って業者に提示している。産地希望価格が優先されてみんなで渡れば怖くない式の対応がこの結果になっている。

JA県連は担当者が品質格差はあっても、価格は統一することが当然と市場価格一覧表を市場担当者に示し、無理な仕切りを要請することが当然の業務と勘違いしている関係者が多い。
産地においても市場の特性を理解し出荷計画を立案し有利販売に向けて、長期的な対応で市場価格が形成されると、担当者も緊張感から有利販売につながる。
特徴のある市場間競争を期待したいが現実は、産地担当者が統一された価格で良く売れたと矛盾していることに気づかないでいる。
契約取引でないかぎり価格は流動的であるはずだ。高い、安いを見込んで委託販売をしていることは、取引市場を信頼していることで市場の個性を生かした単価が形成されたら、担当者も品質を見極める技量の向上が要求され洗練された業界として公正な価格が生まれ、売り手市場としての機能が発揮され市場は情報発信基地としての役目が果たせるだろう。
2、小売店舗の業態変化に注目を
商店街の衰退は目を覆うばかりである。ことに青果店が大幅に減って活気がない。かつては商店街に自転車で買い物に来るお客で、時間帯によっては歩行者天国が自転車の駐輪場になっていたが、いまや閑散として寂しい限りである。ドラッグストアや100円ショップが増えて街並みが変わってきた。
ショッピングセンターやスーパーの活気ある商店街は賑わっているが、大手量販店の台頭で、駅のターミナル周辺は小売店舗に影響を与えている。コンビには飽和状態で伸び悩み99ショップなどの惣菜コーナーに青果物を納入したことから、コンビニにも青果物コーナーが見受けられる。
このように青果物の小売販売も多様化しているが、いずれにしても消費者の少量買い傾向が増えて果実はネットや袋、パックと包装は多彩であるが、バラ売りが多く、野菜もカットや本数売りに変わっている。大型量販店は週末の家族連れで賑わっているが、ウイークデイ対策として火曜日、水曜日は特別サービスを企画し100円から98円コーナー等を導入し青果物の単価安イメージが定着し厳しい販売環境が続いている。

しかし一方、大手量販店の営業状態をみると、長期の販売不振で収益が軒並み悪化している。スクラップされている店舗も増えてきている。ことに生鮮品が充実していないと集客力がないのである。大手量販店でも総合スーパーから生鮮品に特化した店舗運営に切り替えてきている。こうした水面下の大きな変化に産地も市場も注目しておく必要があるだろう。
3、販売促進活動のポイント
p1030023.JPGマネキン試食販売が量販店を中心に展開されるが、そのほとんどは消費宣伝目的より、売り込み戦略としての条件で利用され、本来の消費宣伝につながる場合が少ない。継続販売ではなく週変わりの産地紹介で販促効果が薄れている。
さらに生産者がわざわざ消費地に出向いて意欲的に販促活動を行うが販売数量を重視した店舗を選択し、産地対策のイメージに重点がおかれている場合もある。消費宣伝は試食を重視し消費者に青果物の食味や調理方法をPRすることを目的に盛り上げることである。
外国産の消費宣伝はイメージアップに努め継続販売に向けて売り場の拡大を戦略としている。国産は産地間競争の消費宣伝に偏っているが、青果物の消費拡大に向けての販売戦略を掲げて、商店街から量販店まで業界あげて対応策を見直すことで産地に勢いが芽生える。
消費宣伝は消費者に向けて自信を持って薦めると立ち止まって試食をしてもらえる。私はその現場に立って消費宣伝を行ってききた経験から、大声で消費者に真剣に訴えると必ず立ち止まって試食してもらえた。そして協賛してもらえた。しかし消費者は正直である。食味が悪いと逆効果になりやすい。
例をあげると、10月中旬から12月まで毎週末に専属マネキンで同一銘柄みかんの試食宣伝を行うと、美味しいみかんが消費者に定着し売り場いっぱいに並んだみかんは試食効果で売れ行きは良く、売り場担当者も協力して盛り上がっていく。市場や産地関係者も販売促進の流れが、消費者と産地が近づく大きな役割を果たしていると歓迎してくれる。
4、様変わりする産地の動き
■ 共販率の低下は何をもたらすか
p1010750.JPG(1)JA共販率の低下は卸売市場取扱高の減少につながっている。ここ数年、市場の取扱高は減少に転じている。生産者の直売所も多様化している。さらに量販店では生産者の顔が見える青果物コーナーが設置され、地元生産者が納入している。またインターネット販売や無店舗販売に青果物が取り入れられている。
JA全農センターや県連、各JAによる直販部門の扱いが肥大化し業務用、大型ユーザー、量販店への取引が増えて、旬の時期に特定階級品の市場離れが多くなり、販売戦略に支障をきたしている。極論すれば市場は生産者の余剰品売り場と化して、価格形成機能が薄れていることに気づいてない。さらに後継者不足から産地育成の意味合いからも法人組織に期待が向けられている。しかし、本来生産者個々による農業は生産者と心が通って生産部会組織との関係が市場販売に生かされて消費に結びついた取引ができたが、市場流通を無視した生産環境が組織化されていることを懸念する。
市場流通がこのまま軽んじられ弱体化して、機能を果たさなくなった場合を想定すると、自由市場が誕生し生産者自らの販売会社が街並みを形成するマーケットとなるだろう。となると自分で生産と販売とまかなうことになり、現在のような生産中心の作業体系が損なわれ、しかも品質重視の生産は不可能となろう。
消費者は品質を重視し安心・安全の青果物が当然のことと信じているなかで、経済性のみ追求する農産物が多くなることも予想される。大都市周辺の野菜産地は葉物類で周年栽培における生産コストは軽減化されるが、遠隔地産地は物流費が重なっているので、露地栽培でも価格を希望し安定生産をめざしている。
このように産地の特徴を生かした旬の時期に主産地イメージを高める生産体制が望まれる。さらに生産コストの上昇で施設園芸に与える影響は生産体制の構図に変化が生まれる。施設園芸の誕生で季節感をなくした青果物の生産は消者に満足感を与え消費拡大に貢献し産地育成で農村が繁栄してきたが、概ねの産地が高齢化し後継者不足で先行き不安を感じている産地が多くなってきた。
さらにJA合併で組織から離れて自主販売路線が増えて、大型生産者グループによる生産出荷組合組織は各産地で個性化生産をめざして、産直を重視しながら販売しているが、消費者に安心・安全の国内園芸作物の評価を軸とした市場流通を重視する販売展開は流通コストを廉価にしていることを見直したい。
■ 適地適作をめざそう
(2)生産者の高齢化で後継者不足は生産体制に変化が生じて、法人か組織が急速に進んでいるが、JA産地の共同作業は生産部会グループによる助け合い精神から産地育成を重んじられて生産指導から集荷、販売と一連の流れで評価を受け市場流通による有利販売につながる組織が徐々に弱体化し、生産面に安定感がなく販売は市場向けに不安が生じている。
反面生産コストの上昇から産地が希望する価格から離れ、商材としての販売コーナーが狭くなっていることへの懸念が感じられ、果物離れの要因になっている。輸入果物は入荷時期と数量、価格が見通せるから量販店の売り場が広く、とくにバナナが年間商材として重視されて消費者の関心も高いが、国内果実の先行きはコストの吸収が困難視される。
p1010469.JPG品質重視に向けての生産技術の革新で国産果実は最高の食味と品質が評価され、一世を風靡した果樹産業も果実専門店の衰退と贈答需要の減少で、一般需要向けの量販店主導の商材展開への切り替わりを見極めてこそ季節需要を的確に捉える適地適作の産地対応が要点と思われる。
例えば柑橘類といちごを比較すると、そのことが感じとられる。柑橘類の代表品種はみかんでハウスみかんと露地みかんのシーズンは周年をまたがる出荷期間で消費者に馴染まれているが、石油製品の高騰でハウスからグリーンハウスにシフトしコスト高を少しでも生産面に反映させている。露地みかんも品種更新やマルチ対応で産地の生き残りを模索しているが、産地価格差から産地による優劣が生じて生産者の意欲が薄れて、生産量の減少は需要減につながっている。
いちごは6ヶ月間の販売で市場流通を中心に産地や品種で変化が生じ業務用需要期が年内消費に反映し、一般売り商材の関わりが量販店等の安定した売り場を確保していることが意欲的な産地育成につながって数量や価格も安定している品目である、一方、県別品種の時代になって生産面でも一部産地は廉価の労働力に外国人労働を受け入れ共撰パック詰め作業等で規模拡大の収量増がなされている産地もあるがコスト高傾向は避けられない。
果実は季節感が薄れた柑橘類は王者から滑り落ち、夏果実のなし、桃、すもも等は期待されているが、春先の晩柑類が減ってアールスメロンを除くメロン類が産地主導である。さらに産直販売が多く市場流通が少なく安定販売から除外されていることに産地は気づいていないのが不思議でならない。
関東周辺の産地動向はいちごやメロン等の果実品目から周年栽培の野菜に切り替えて研修生(中国人就労者)を雇い入れて規模拡大の農業に取り組んでいる。生産者は消費者のリピーターに応える品質重視は個人責任生産に従事し高値より品質重視を評価してくれる販売方針で結果として有利販売につながっている。安心・安全に向けた野菜生産に関心が高い。結果として果実、野菜の共販体制が薄れ出荷組合によるグループ組織は、系統販売の価格優先より活路が見える。
5、市場法改正による手数料自由化の行方
市場手数料自由化は荷主交付金、完納奨励金の歩戻し制度の崩壊につながる。さらに委託販売取引から契約取引への比率が増えて、委託仕切りから買い付け仕切りが見込まれる。市場は手数料主義で買い付けの場合は利益率が低いので経営面に与える影響は大きく、現状でも仕切り金3日目払い制度の維持が困難になっている要因は小売買参人の減少で組合による代払いが厳しい。仲卸業者の収益・財務を悪化させている要因は、量販店対応で強い立場の取引へのサービス過剰が負担増につながっている。
仲卸組合はさらに量販店等の代金回収サイトが長いことから、立替払いが経営的に困難になっていることと代払いに影響が出始めていることも考え合わせてみると、代払い機関からの脱皮を促し、商社の市場参入が現実味を帯びてきた。しかし、商社金融が導入されると市場取引には大きなリスクとともに混乱を伴うだろう。
従来から出荷団体側の卸売業者に対する出荷優位の立場で指し値出荷が要求されていることも市場の需給状況によっては、販売残や受託拒否の取引が選択肢として採用され、産地側も判断や対応の責任も重要になってきている。市場法が改正されるたびに流通面の改善はなされてきたが、生産者サイドは生産費の負担増につながって価格形成の不透明に結び付く要因になっている。
大店法改正では駅前商店街からお客が減って街の崩壊現象は地方都市に多く見受けられる。市場の合理化で健全経営を目指し業界には卸売市場や仲卸の合併や閉鎖が進められていることはよいが、直販の啓発で市場流通の縮小が予見されるが、裏を返せば生産量の減少で需給率は下がる政策と疑いたくなる。
6、食の安全に向けて産地の取り組みは・・・
食の安全に向けて生産者の取り組み情報の共有からJA組織一体になって隣接生産地の品目にも注意を払って農薬散布に留意し、農作業は栽培履歴の記帳を徹底している。
いま小売店の店頭販売においても国産優先の店舗が多い。中食、外食サイドの食材も同様の傾向が打ち出されて輸入野菜の牽制になっているが、産地では隣接農地の農薬飛散(ドリフト)防止対応に果樹地帯や野菜団地も収穫間際の作物にはとくに神経を使って周辺への気配りは容易ではない現状である。
生産者もJA担当者と農薬使用要領を遵守しているが、自家菜園生産者の意識を誤らないように指導しないと周辺産地が迷惑を被ることも考えられる。流通段階では国産に切り替える方針が打ち出されるなかで、野菜調達面では契約産地の開発に力点をおいた比率が高まっている傾向は否めない。
量販店は個人を特定できるPB商品の拡大や栽培履歴の信頼度の高い産地や残留農薬検査をする産地を優先的に取引対象とする傾向は大いにあり得る。生産者サイドのコスト負担が高まることへの理解が市場サイドへ要望される。
7、これからの生産・販売に向けての考察
果実の需要は年々下降線をたどり、かつての法人需要で活発な展開を思い起すと、専門店の果実売り場は縮小され個人贈答に支えられている。品質は生産者の努力で最高傑作果実が周年出回って消費者はかなり贅沢になっているが、生産者コストは高まる一方で商材感のある果実を除いて量販店対応の生産では流通の理解を得て、大衆向け品質は糖度重視から食感重視の内容に切り替えたなかで消費拡大に向けて品目ごとに美味しい時期の安定生産が価格に反映される。
産地間競争重視から品目の特徴を生かした生産に取り組むことで国内産果実をアピールする生産基盤を確立しないと、果実の消費離れを取り戻すことはできない。これまで施設生産重視で果実の生産意欲が高揚した功績は計り知れないが、これから生産コスト吸収が課題となる。省エネ生産や露地栽培が見直されるので品目や産地に変化が生じている。
省エネ生産や露地栽培が見直されているが、量販店に向けて販売戦略を重視し価格形成に有利な条件を出せる産地が生き残る時代背景を無視できない。市場サイドは安定数量が見込める産地に比重が高く、個性的な歴史を持った品目の産地が危機におかされることが懸念される。
産地は直販やネット販売で生き残りを賭けた個人や出荷組合に、JA部会の戸惑いも感じられる。市場サイドの数量、メリットがないJA産地でも理解を示さないと果実産業には赤ランプが灯る。またこれ以上、果実専門店が商店街から消えることがないように、市場にも産地にもディラーヘルプをしてもらいたい。
野菜は安心・安全性問題から輸入野菜から国産見直しにシフトしてきている。しかし生産面の産地間リレー出荷が不安定である。施設園芸の普及が果実と同様に産地活性化に果たした功績は大きいが、いまではコスト吸収が困難視されることから、周年生産品目に切り替わっている傾向が見受けられる。
p1010336.JPG日本列島産地の見直しから品目を選定すると、大型野菜を始め根菜類、洋菜類、と産地拡大は残されているが、市場サイドの無謀な産地間競争を煽ることから産地が生かされないことを指摘されている。いま一度、需要と供給を見直すことで国内産地が労働力配分からコストの吸収が図れるよう理解して欲しい。
最近の産地労働力は、研修生雇用で生産面積拡大からコスト吸収を経営に生かした意欲的な農業が各地に沸き起こって、高値販売から安定価格で経営の安定をめざした産地が出荷組合グループに多く見受けられる。市場サイドの機能が生かされると、産直より市場流通メリットが生産者に還元できる現状を報告しておきたい。
野菜が生産から販売まで果実より有利な立場に変わっていることは避けて通れない。食育に関する問題点を最後に提起すると、子どもたちが野菜、果実の四季を知らずに食する環境にならされていることを顧みて自然の生産を教える機会に学校給食を食生活の改善に結びつけて考えてみたい。

春夏秋冬の季節感から旬の時期に生鮮野菜を中心に料理を拡げながらデザートに果実を食する習慣を取り入れることを推進すると、学校給食が冷凍食材から生鮮食材に切り替わり、安心・安全な食材で健康な食生活が取り戻せて、納入業者である小売業者の活性化につながる。となると、市場流通が甦ることが期待できる。
結局のところ国内の産地育成を考えることが市場流通にとっても安定した状態で仕事に取り組めることになる。ともあれ国内産地に活力あっての市場流通だということを忘れてはならないだろう。


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