ところでイチゴは青果物のなかでいちばんの稼ぎ頭であるだけに品種間、産地間競争が激しくまさに流通戦国時代なのである。
さて青果物の場合、新商材を世に出すときに生産者はどこの意見を聞くのが賢明なのか?
意外と知られていないが生産者の多くがここを間違って姿を消してきたのだ。
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それはなんといっても小売店の評価である。
市場の卸は生産者に対して立場的に弱いので厳しい意見が言えないのだ。それは無条件委託で集荷しなければならないためだ。仲卸は仕入するお客の立場だからそこまではないにしても、卸が集荷できなくなると困るから気を使わざるを得ない。小売店はいい商材であれば基本的にどこの産地でもいいのである。産地間競争は大いにしてもらったほうがいい。
したがて生産者は小売店のストレートな意見より、耳障りがよくてユルユルの卸の意見を聞きたがる。でもこんなぬるま湯に浸かっている産地は決して一流の産地にはなれない。
「野菜は鮮度、果実は味」で勝負といわれる。野菜は基本的に調理されるものだ。調味料で味付けされるので味ではない。栄養価と植物繊維が大切だ。果実は野菜に比べるとストレートに口に入る。糖度と酸味とコクのバランスが勝負どころだ。さらに規格選別の問題も大切である。その商品が他産地ものと比較して価値があるのかどうかである。
さて安田さんの「五郎の恋人」の評価に耳を傾けたい。生産者は安田さんの声をモニターとして考えるくらいでないといけないのだ。いささか長い文章だがどうかお付き合い願いたい。
~「五郎の恋人」はブランドいちごになり得るのか?~
「冷静に考えて、現時点で私の立場としては NO! です。
私の店に回ってくるのが変形果の物が多いのですが、正品と呼ばれる物の割合も低いのが現状のようですけれども…それにしてもチョッとこれはないだろって言いたくなるのがあまりにも多過ぎます。
以前、Facebook上でF氏がご指摘になった事もあるのですが、数日前もある方が上と下のイチゴが違い過ぎると言って来られました。そんな高い価格で 売っている訳でもないのですが、他産地のイチゴの選果状態に比べると、今の時代こんなのあり?って思えるような内容であることは確かです。
F氏がご指摘になった頃は、多少の変形は目を瞑って欲しいな…等と安易に考えていたのですが、最近の状態は度が過ぎると言いたくなるような状態です。汚い言い回しで申し訳ないですが、「お前ら、『イチゴ』っちゅうもんを舐めとるんか!」と叫びたくなるくらいです。
生産者としては、きめ細かな選果をしていらっしゃるのでしょうが、まあ、等級分けにしてもなんと細かいと思うような分け方ですが、根本的に選果基準が甘すぎます!
市場にイチゴが足りない時代ならいざ知らず、今や『イチゴ戦国時代』等と言われるくらいに各産地がしのぎを削っている時代に、おいおい、こんな物まで出荷 してくるの?と言いたくなるような状態です。恐らく、他産地では格外としてはねられたり、圃場廃棄される物まで混ざっています。いくら出荷の絶対量が少ないからと言って、この状態は考え直してもらいたいものです。
「五郎の恋人」に関して言えば、品種的には「恋イチゴ」と「さちのか」の2種類が出荷されているわけですが、消費者から見ればいずれも「五郎の恋人」なわけです。つまり、「五郎の恋人」と言うブランド名を冠したイチゴを出荷しているわけですよね。
それならば、そのブランドに対して責任と自覚を持って頂きたい。
今年が1年目だから、という甘えもあるんでしょうか?
逆に1年目だからこそ、厳し過ぎるくらいの選果をしてこそそのブランドが信頼されるようになると思うのですが…
いい例が「ルビーロマン」だと思います。生産者にしてみれば正品率が低すぎると思われる位の、格付け責任者による審査を経て出荷され続けた事によって、「ルビーロマン・ブランド」が形成されつつあります。
あえて、ある程度収量を確保したいのであれば、「五郎の恋人」以外の別ブランドにすべきではないでしょうか?「五郎の変人」等とは言いませんが(笑)、「五郎の友達」とか「五郎の悪友」(これもきつ過ぎか^^;)…
そうすれば、逆にスペシャル・ブランドとして「五郎の女房」、「五郎の奥方」、etc. 等と言った展開も可能なのでは…
それにしても、末端の反応が生産者へ上手くフィードバックされていないのではと思う事があります。初出荷の段階で、一度競りにかけられただけで、その後は仲卸への予約相対による販売が続いています。最近の果実販売の主流がそうだと言えばそれまでなんですが、競りの軽視と言う事がどうも小売業者として は腑に落ちないこともあります。
金沢の卸売市場では、所謂高級ブランドのマスクメロンやルビーロマンは競りにかけられていますが…。競りの持つ価格決定機能や、価格を通じての生産者への市場の意思表示と言うものが疎んじられていくのもどうかと思いますけどね。
やはり、生産者も頻繁に市場へ足を運んで、自分の出荷している商品への評価にも耳を傾け、様々な情報収集に心がけるべきだと思いますが…。
医療関係のA社とのコラボと言う事もあって、ネーミングやパッケージに関しては、今までの県内産の農産物には見られないセンスの良さや斬新さは評価 しますが、何か肝心のところが欠落しているような気がします。それは、最終的には誰のもとへ届き、だれがお金を払うのかと言う事だと思います。少し、出し 手側の思惑が先行しているような気がしてなりません。
マスコミやその他の心地よい反応だけに耳を傾けていると、あとでしっぺ返しを食らうことにもなりませんよ。否定的意見にこそ真実が隠されているという事もありますから。
何となく、充分な準備も整わないまま見切り発車された感も否めませんが、容器やその他の細かい点にもまだまだ改善の余地は残されていると思います。是非とも、消費者と言う最終段階へどんな形で商品が届くのかを再検証して頂きたいと思います。
辛口の事ばかりになってしまいましたが、これも「五郎の恋人」が金沢を代表するブランド・イチゴとして確固たるものになった欲しいとの思いからです。悪しからず…」
上物の規格選別を厳しくしたあとの規格外品の販売なら、違ったネーミングにしなければいけないだろう。
この安田さんの指摘を素直に改善して取り組んでいけるなら産地としての評価を高めるだろう。いまや東京・大田市場でもせりにかけられるのは全入荷量の2割もないだろう。せりにかけられるのは特定の品目だけだ。あとは予約相対と称する先取りで流通する。価格は流通させたあとに全体のバランスで決定されていく。こうして市場ではせり全盛時代のように商品の評価機能はなくなりつつある。では完全になくなるのかというとそんなことはない。むしろ消費者からの指摘があるからかなり厳しくなっている。無言でリピートされなくなるのだ。
ではこれから生産者はどう対処すればいいのか。安田さんも触れておられたが競合産地の動向を市場で確認するのがいちばん分かりやすい。銘柄品は規格選別も厳しくされているしそれなりの努力がされている。そのことを自分たちの眼で確かめることだ。そしてあそこの産地のあれでないといけないというくらいに産地銘柄指定がもらえるほどでないと、今後は生き残れないだろう。
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