2022年7月5日火曜日

丹波篠山: 井関農園の田んぼを訪ねて

 

 

 

 

 

 

丹波篠山

井関農園の田んぼを訪ねて

 

 

 

 

 

 

母なる丹波


 

 

 

 

 

 

 

昨年ツイッター上で井関農園の記事が目にとまった。兵庫県丹波篠山で伝統作物の黒枝豆・黒豆・小豆を栽培しアイガモ農法で稲作を展開。新しくいちごの栽培に取り組んでいるということだったので、私のページでもシェアしたほどだ。

 

そして今年の1月、丹波篠山の風を現地で感じてみたくなり取材申し込みをすると、快諾いただいたのでアイガモが放たれる6月を選んだ。

6月19日、大阪市内に前泊して20日の早朝に丹波篠山に向かった。JR福知山線に乗ると三田を過ぎたころから車窓は田園風景へと変わる。

ところで収量の上がる水田技術は縄文時代から弥生時代にかけて、中国大陸から入ってきたといわれる。それまでは陸稲のおかぼなどが食されていたようだ。

こうして稲作伝来とともに穀物の貯蔵が可能となると、貧富の格差も生まれてきた。いまの言葉で表現するとMAの時代となり、各地で開墾が進みそれが荘園へと発展していった。

やがて江戸時代になると、諸藩の大名は石高を競うようになる。デリバティブもなければ、不良債権のバンドリングもないはるか昔、革新的で新しいもの好きな大阪は、世界初の先物取引市場を発明し、1730年には「堂島米会所」が開設された。

こうしたことに思いをめぐらせているうちに電車は目的地の篠山口駅に着いた。

駅前には「母なる丹波」と刻まれた石碑があった。入梅シーズンで天候を心配したものの快晴となり一安心。井関農園の長男・井関俊輔さんに圃場を案内してもらった。


 

 

 

 

井関農園は江戸時代から続く農家

 

 

 

 

 

井関俊輔さん



 

 

自宅は大阪府池田市。農場が兵庫県篠山市にある。

同園は江戸時代から続く農家で、もともと池田市でミニトマト、ナス、イチジクなどを栽培されていたが、都市化の波に押され30年ほど前に丹波篠山にご縁があり生産拠点を移転。

俊輔さんは大学を卒業すると、農業には縁がなく高校で理科の非常勤教師や塾の教師をされていたそうだ。しかし子どもと接するうちに食育の大切さを悟り、一念発起して就農。今年で就農12年目になる。5歳年下の優佑さんは一年先輩の就農者だそうだ。

現在14ヘクタールの田んぼ(うち4割りほどがアイガモ農法)でお米と丹波篠山特産の黒枝豆や黒大豆を父親と兄弟二人で栽培。

さらに地元の池田市では人の交流できる場づくりをめざしていちご栽培を開始した。いちご狩りを実施したり、将来的にはオリジナルブランドいちご栽培ができたらという夢を持っている。

自宅がある池田市から、毎日車で片道1時間半の通勤農業者だ。

 

 

 

 

 

 

国内最大級のアイガモ農法を展開中

 

 

 

 

 

1400羽ほどのアイガモが放たれる



 

 

さてアイガモ農法との出会いは祖父・昭二さんが導入。

熊本からアイガモの雛を購入したのがきっかけという。それが俊輔さんの父・義次さん、そして井関兄弟へと三世代にわたり受け継がれてきた。

 

アイガモ農法はかなり手間暇のかかる農法であるが、それだけにメリットも多いのだという。

ジャンボタニシの卵や稲作の天敵と言われるカメムシなどの害虫を食べてくれるので農薬を必要としない。

 

さらにアイガモが泳ぎ回ることにより、水田の水が撹拌され水を濁らせることで日光を遮断し雑草の成長を妨げるので、除草剤はまったく使用せずにすむ。

アイガモが稲間を泳ぎ回ることにより、株の張りがよくなり丈夫な稲が育つ。おまけにアイガモの排出する糞尿は肥料となり稲の発育に貢献する。

除草剤や化学肥料も必要としない。アイガモ農法はまさに至れり尽くせりのパートナー的存在のようだ。

田植え後にやってくる1400羽ほどのアイガモの雛は、田んぼで泳ぎ回り、稲穂が付き始める7月中旬ごろには役目を終える。そして食肉用として加工・販売される。

同園を訪れる子どもたちには、子どもたちの目線で丁寧に命の大切さ・食育の大切さも教えているそうだ。俊輔さんはいま子育て真っ最中で自分の農業に取り組む姿をかっこいいと思って貰いたいと考えている。


 

 

 

 

 

有機JASマークの認証を受け安心・安全を提供

 

 

 

 

 

 

認定基準に「遺伝子組み換え技術を使用しない」もある


 

 

 

 

井関農園の特徴はアイガモ農法でお米を栽培し、有機JASの認証を受けていることにある。

有機JASマークとは、無農薬・無化学肥料で栽培した農産物に表示できるマーク。

認証を受けるためには栽培方法だけでなく、栽培記録、農機具の洗浄記録、出荷時の有機JASマークの使用枚数など細かいチェック項目がある。

むろん費用もかかる。そのために、有機JASマークの表示がある農産物は安心して召し上がっていたでける。

 

 

 

 

アイガモ米のラインナップ

 

 

 

 

 

すぐに完売する「アイガモの夢」

 

 

「あいがもの夢」==有機米コシヒカリ

 初めて井関農園のお米をお買い求めの方にオススメしています。汁物やカレーにもオススメ。

「あいがもの輝」==有機米夢ごこち

 アッサリとした甘みなので、手巻き寿司やちらし寿司にもオススメ。

「あいがもの華」==有機米ミルキークイーン

 冷めても硬くなりにくいので、お弁当のご飯やおにぎりにもオススメ。

低農薬米コシヒカリ

 必要最低限の農薬しか使わずに栽培したお米です。

 

 

 

 

Web3.0時代を見据えたこれからの販売方法

 

 

 

 

 

 

俊輔さんが取り組むデジタルアートのNFT


 

 

 

 

私は長年、生鮮食料品の販売方法をウオッチングしてきた。

卸売市場制度は戦後の食料難で供給が需要に追いつかない時代は効力を発揮してきた。だから卸売市場制度は揺るがないものと思われてきた。公平な取引としてせり取引が有効であった。しかし大手量販店に駆逐されて、青果小売商の減少でせり取引そのものが形骸化してきた。

各地に生産者直売所ができ、マルシェ、郊外には道の駅もたくさんできた。かつて破竹の勢いのあった量販店もいまでは販売不振で青息吐息。

こうして販売方法が多様化するなかで、インターネット時代はそれに拍車をかけ市場流通は衰退の一途である。もう巻き返しなど出来ないところまできているようだ。

とくに銘柄品の果物などは生産者の意識も高く、野菜に比較して日持ちもいいので、どんどん市場外流通へと流れている。少し保存の効くじゃがいも、たまねぎなどは真っ先に市場流通を離れていった。

俊輔さんに限らず、マルシェに出店した生産者が異口同音にいうことは、「消費者から直接、評価や要望などが聞けて勉強になりました」で、仕事の改善のためのヒントになったということだ。市場はこうして生産者と消費者が繋がりを強化させていることを忘れてはならないだろう。

 

俊輔さんがいま熱心に取り組むのはデジタルアートのNFT。

これはブロックチェーン技術が絡んだものだが、試行錯誤の遊び心は必要なことだ。ブロックチェーンが本格的に稼働すると、農産物の取引が一変していくことは間違いないところだから。

 

井関農園では「ライスショップまめだぬき」という直売所を池田市にもっていて、お米だけでなく黒豆や鴨肉もお買い求めできる。

住所/池田市井口堂2-7-13

営業時間/9:00~19:00まで 定休日/日曜日

電話/FAX 072-760-3588

インターネットでも販売中

 

こうして生産から販売までの自己完結型農業を展開している井関農園の最大の特徴だ。

これからは不特定多数に販売することではなく、特定多数の消費者への販売が求められているのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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