むかし九州に優秀な栽培技術をもった梨の生産者がいました。
東京の有名デパートのバイヤーの知れるところとなりました。こうした情報というのはインターネットがない時代でも早く伝わりました。
バイヤーは産地に足を何回も運びました。
いまでは想像も出来ませんが、当時はデパートにも優秀なバイヤーが多かったですね。「よそで販売していないものを売ろう」という意気込みは相当なものでした。いまのスーパーのバイヤーレベルではありませんでした。
とうとうその東京のデパートに大分の梨が並びました。生産者は嬉しくなり舞い上がりました。
・・・
そこへ、ライバル店のデパートのバイヤーも駆けつけてきたのです。
こういう時、あなたならどうしますか?
商売だからだれに販売してもいいじゃないかと対応しますか?
そうです!その生産者はライバル店のデパートにも販売したのです。「オレがどこに販売しようが分かりはしないだろう」と。
しかし、こうした情報はすぐに分かるものです。ライバル店の売り場の偵察はお互い徹底してますから。
そして最初のバイヤーは販売を中止してきました。
こうした商売の鉄則が分からない生産者ですから、2番バッターのバイヤーとも上手くいかず、販売は長続きしませんでした。
こうして崩壊していった産地の事例をボクはたくさん見てきました。野菜でもあります。
ヒット商品の影で、こうした失敗事例は無数にあります。こんど「産地崩壊の失敗事例」という本を書きましょうかね。売れるかも?
とくに新商材というのは生産者と販売する人が、お互い辛抱して根気よく育てていくものです。
ボクがその生産者の立場なら、こうしたことでしょう。
「申し訳ありませんが、すでに●●デパートで販売をお願いしているところです。
二股かけるわけにいきませんとお断りしました。
私はあなたを信頼して全力で支援していきますので、販売に全力投球してくれますか?」と。
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